前置き
問題で登場するような,三角形の外接円に外接し,さらにその三角形の 2 辺とも接するような円は Mixtilinear excircle と呼ばれ,Mixtilinear incircle と似た感じの性質が成り立ってくれるようです.この解説内では ∠A 内にあるようなものを A-Mixtilinear excircle と呼ぼうと思います.問題文より A-Mixtilinear excircle の半径の長さは a になる,といったところです.
△ABC の内接円と辺 BC,CA,AB との交点を順に D,E,F とし,
AE=AF=x,BD=BF=y,CD=CE=z
とします.(この変換は Ravi 変換と呼ばれます)
また,△ABC の内接円の半径を r, 内心を I とします.
幾何パート1
まず,内心の構図の問題で外接円半径が与えられているのは今回は厄介にみえるので,この条件から処理しましょう.
△ABC の面積を求める式を立式することで,以下のような関係式を得られます:
⟺ xyz(x+y+z)=4×105(x+y)(y+z)(z+x)(x+y)(y+z)(z+x)xyz(x+y+z)=4×1051
(それぞれ左辺は Heron の公式,右辺は △ABC=4Rabc のやつです.)
また同様に xyz(x+y+z)=r(x+y+z) より
r=x+y+zxyz
という関係式も得られます.
幾何パート2
次に a,b,c を x,y,z で表していきます.図に対称性があるので,ここでは a を求めることを目標にします.
公式解説同様に中心 A, 半径 AB×AC の円で反転し,移ったものを直線 AI で対称移動する操作 τ を考えます.A-Mixtilinear excircle は直線 AB,AC に接し,△ABC の外接円 Γ とも接するので,操作 τ による移り先は直線 AB,AC,BC に接する円,すなわち △ABC の内接円になります.逆に,△ABC の内接円に操作 τ を行うことで,A-Mixtilinear excircle に移ることが分かります.ここで次のような事実があります:
事実.中心 I, 半径 r の (A を通らない) 円に対して操作 τ を行ったとき,移り先は半径 ∣r2−AI2∣r×AB×AC の円になる.
証明.OMC113-F の解説を参照してください.なお今回は反転させる円の半径が 1 ではなく AB×AC であるので,反転先の円が (AB×AC)2 倍されることに注意してください.
この事実の通りに計算することで,
a=x2r(x+y)(x+z)
が得られます.同様に
b=y2r(y+x)(y+z),c=z2r(z+y)(z+x)
となります.これにて幾何パートは終了です.
事実がよく分からなかった人向けの別アプローチ
△ABC の ∠A 内の傍心を J, A-Mixtilinear excircle の中心を OA とし,J,OA から直線 AB におろした垂線の足を G,H とします.このとき,AG=x+y+z です.ここから ∠BAI=θ とすると,△FAI∼△GAJ∼△JAH∼△HAOA より,tanθ=r/x を用いて以下のように a が求まります:
a=AG⋅cosθ1⋅cosθ1⋅tanθ=x3(x+y+z)(x2+r2)r=x2r(x+y)(x+z)
代数パート
さて問題は以下を最小化させる問題に帰着されました:
U=x+y+zxyz(x211(x+y)(x+z)+y213(y+x)(y+z)+z217(z+y)(z+x))
分母分子の次数を揃えたいので,右辺に幾何パート1のときに得た,(x+y)(y+z)(z+x)4×105xyz(x+y+z) (=1) をかけると,
U=4×105×(xy+zx11yz+xy+yz13zx+xy+zx17yz)
となります.s=yz,t=zx,u=xy と置き,V=t+u11s+u+s13t+s+t17u の最小値を考えればよいです.Cauchy-Schwarz の不等式を用いることで,以下のように求まります:
V=t+u11s+u+s13t+s+t17u=−41+(s+t+u)(t+u11+u+s13+s+t17)=−41+21((t+u)+(u+s)+(s+t))(t+u11+u+s13+s+t17)≥−41+21(11+13+17)2
等号成立も確認できるので U=4×105V の最小値も求まります.