出題範囲
以下の記述は,高等学校学習指導要領(2018年告示・2022年4月施行)にのっとるものとする.
なお,有志コンテストについてはこの限りではない.
- 数学Ⅰは「数と式」「図形と計量」「二次関数」を範囲とし,「データの分析」は基本的に範囲外とする.
- 数学Aはすべてを範囲とする.
- 数学Ⅱはすべてを範囲とする.
- 数学Bは「数列」のみを範囲とし,「統計的な推測」「数学と社会生活」は基本的に範囲外とする.
- 数学Ⅲは「極限」のみを範囲とし,「微分法」「積分法」は基本的に範囲外とする.
- 数学Cは「ベクトル」「複素数平面」を範囲とし,「平面上の曲線」「数学的な表現の工夫」は基本的に範囲外とする.
- 初等幾何・整数論・不等式・関数の扱い・離散数学などについては,より幅広い内容を範囲とすることがある.
- 以下で定義された用語・記法については無条件に使用を認め,質問対応も行わない.
用語・記法集
今後,拡充していきます.
- 特に断りが無ければ,数の表記は十進法で考えるものとする.
集合の記法など
- 単に組といったとき,順序付きであるものとする.すなわち,順序が異なるものも区別するものとする.
- 組は などと および で要素を囲んで表す.一方で,集合は などと および で要素を囲んで表す.
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集合 に対し,以下のように定める:
- が の元である,すなわち が に属するとき, で表す.
- に属する元がすべて にも属するとき, は の部分集合であるといい, または で表す.
- または の少なくとも一方に属する元からなる集合を と の和集合あるいは合併とよび, で表す.
- および の双方に属する元からなる集合を と の共通部分あるいは交差(交叉)とよび, で表す.
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に属するが に属さない元からなる集合を と の差集合とよび, で表す.
特に が の部分集合であるとき, の補集合ともよばれる. - あるいは で に含まれる元の数を表す.
-
実数 に対し,以下のように定める:
- 以上 以下のすべての実数からなる集合を で表す.この形式の集合を閉区間とよぶ.
- より大きく 未満のすべての実数からなる集合を または で表す.この形式の集合を開区間とよぶ.
- 以上 未満のすべての実数からなる集合を または で表す.
- より大きく 以下のすべての実数からなる集合を または で表す.
-
で に対する の和を意味する.
また, で,条件をみたす すべてに対する の和を意味する. -
で に対する の積を意味する.
また, で,条件をみたす すべてに対する の積を意味する. -
非負整数 に対し,相異なる 個のものから 個のものを選ぶ場合の数を または で表す.
ただし, のときは とし, のときは とする. -
個の実数 に対し, や で における最小の値を表す.
また,実数からなる集合 に対して, で における最小の値を表す. -
個の実数 に対し, や で における最大の値を表す.
また,実数からなる集合 に対して, で における最大の値を表す.
幾何
-
ある円上にある 点 に対し,弧 のうち短い方を劣弧 とよび,長い方を優弧 とよぶ.
なお, が直径をなす場合は,OMCではこの用語は用いないものとする. - 三角形において,その 辺それぞれの垂直二等分線は 点で交わる.これを三角形の外心とよぶ. また,三角形において,その 頂点すべてを通る円が一意に存在する.これを三角形の外接円とよぶ. 外心は外接円の中心である.
- 三角形において,各頂点から対辺におろした 本の垂線は 点で交わる.これを三角形の垂心とよぶ.
- 三角形において,各頂点とそれぞれの対辺の中点を結ぶ 本の直線(中線)は 点で交わる.これを三角形の重心とよぶ.
- 一般に 個の点 に対し,各座標の(相加)平均によって得られる点を, の幾何中心とよぶ. のとき幾何中心は線分 の中点に一致し, のとき幾何中心は三角形 の重心に一致する.
- (正三角形でない)三角形の外心・垂心・重心は同一直線上にある.これを三角形のオイラー線(Euler線)とよぶ.
- 三角形において,各辺の中点,各頂点から対辺におろした垂線の足,各頂点と垂心の中点は,すべて同一円周上にある. これを三角形の九点円とよぶ.
- 三角形において,その つの内角それぞれの二等分線は 点で交わる.これを三角形の内心とよぶ. また,三角形において,その 辺すべてに接する円が一意に存在する.これを三角形の内接円とよぶ. 内心は内接円の中心である.
- 三角形 において,角 の内角の二等分線と角 それぞれの外角の二等分線は 点で交わる.これを三角形 の角 内の傍心とよぶ. また,三角形 において,辺 と辺 それぞれの延長線に接する円が一意に存在する.これを三角形 の角 内の傍接円とよぶ. 角 内の傍心は角 内の傍接円の中心である.
-
三角形が退化しているとは,3つの頂点が同一直線上に並ぶことをさす.
非退化な三角形とは,退化していない三角形,すなわち3つの頂点が同一直線上に並ばない三角形をさす.
整数
- 実数 に対し, 以下で最大の整数を または で表す.これを床記号またはガウス記号とよぶ.
- 実数 に対し, 以上で最小の整数を で表す.これを天井記号とよぶ.
- 整数 に対し, なる整数 が存在するとき, は で割り切れる,逆に は を割り切るといい, で表す.また, を の倍数, を の約数とよぶ.
- 整数 および正整数 に対し, が で割り切れるとき, と は を法として合同であるといい, で表す.
- 個の整数 に対し,これらをすべて割り切る整数を の公約数とよぶ. 特にそのうち最大のものを の最大公約数とよび, で表す. ただし, がすべて の場合は,OMCでは考えないものとする.
-
個の整数 に対し, であるとき, は互いに素であるという.
であるとき,「どの つについても互いに素である(pairwise coprime)」とは意味が異なることに注意せよ. - 個の でない整数 に対し,これらですべて割り切れる整数を の公倍数とよぶ. 特にそのうち正で最小のものを の最小公倍数とよび, で表す.
数列の性質
- 実数列 が,任意の に対し をみたすとき, は広義単調増加である,または単に単調増加であるという.
- 実数列 が,任意の に対し をみたすとき, は狭義単調増加であるという.
- 実数列 が,任意の に対し をみたすとき, は広義単調減少である,または単に単調減少であるという.
- 実数列 が,任意の に対し をみたすとき, は狭義単調減少であるという.
- 実数列 について,ある実数 が存在し,任意の に対して が成り立つとき, は上に有界であるという.
- 実数列 について,ある実数 が存在し,任意の に対して が成り立つとき, は下に有界であるという.
数列の極限
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実数列 と実数 が以下をみたすとき, は に収束する,または単に収束するという.
- 任意の正の実数 に対し,ある正の整数 が存在して,任意の 以上の整数 について が成立する.
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実数列 がいかなる値にも収束しないとき, は発散するという.
発散する数列は,さらに以下の 種類に大別される.
-
実数列 が以下をみたすとき, は正の無限大に発散するという.
- 任意の実数 に対し,ある正の整数 が存在して,任意の 以上の整数 について が成立する.
-
実数列 が以下をみたすとき, は負の無限大に発散するという.
- 任意の実数 に対し,ある正の整数 が存在して,任意の 以上の整数 について が成立する.
- 実数列 が正の無限大にも負の無限大にも発散しないとき, は振動するという.
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実数列 が以下をみたすとき, は正の無限大に発散するという.
- 実数列 が(広義)単調増加かつ上に有界であるならば, は収束する. 同様に,実数列 が(広義)単調減少かつ下に有界であるならば, は収束する.
関数の性質
- 集合 の各元に対して集合 の元を対応付ける規則 を, から への関数または写像とよび, を の定義域, を の終域とよぶ. これを で表し, の元 に対応する の元を で表す.
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(一部の)実数に対して定義され実数値をとる関数 に対して,以下のように定める:
- 任意の実数 に対し, をみたすとき, は広義単調増加である,または単に単調増加であるという.
- 任意の実数 に対し, をみたすとき, は狭義単調増加であるという.
- 任意の実数 に対し, をみたすとき, は広義単調減少である,または単に単調減少であるという.
- 任意の実数 に対し, をみたすとき, は狭義単調減少であるという.
実関数の極限
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(一部の)実数に対して定義され実数値をとる関数 と実数 が以下をみたすとき, は で に収束するという.
- 任意の正の実数 に対し,ある正の実数 が存在して, なる任意の実数 に対し が成立する.
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(一部の)実数に対して定義され実数値をとる関数 と実数 が以下をみたすとする.
- 任意の正の実数 に対し,ある実数 が存在して, なる任意の実数 に対し が成立する.
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(一部の)実数に対して定義され実数値をとる関数 と実数 が以下をみたすとする.
- 任意の正の実数 に対し,ある実数 が存在して, なる任意の実数 に対し が成立する.
- 上記のそれぞれの設定について,いかなる にも収束しないとき,発散するという.
多項式
- 単項式も多項式であるものとする.
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の多項式 について,以下のように定める:
- を の次数とよぶ.なお, のとき次数は考えないものとする( とされることもある).
- を の定数項とよぶ.
- を の最高次(の)係数とよぶ.特に であるとき, はモニックであるという.
- をみたす値 を の根とよぶ.
- 複素数 について, を根にもつ有理数係数多項式が存在するとき,そのうち次数が最小であり,かつモニックであるものを, の最小多項式とよぶ. の最小多項式は,存在すれば一意である.
複素数
- 特に断りが無ければ,虚数単位は で表すものとする.
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複素数 に対し( は実数),以下のように定める:
- を の実部とよび, または で表す.また, を の虚部とよび, または で表す.
- を の絶対値とよび, で表す.
- のとき,複素数平面上において原点を , に対応する点を として, 実軸の正方向とベクトル のなす角(反時計回りを正とする)を の偏角とよび, で表す. 偏角には ()の任意の整数倍の差だけ不定性があるが,OMCでこれを定める必要がある場合は問題文中で明記される. また, の偏角はOMCでは考えない.
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虚部が でないような複素数を虚数とよぶ.さらに,実部が であるような虚数を純虚数とよぶ.
なお,実部が である複素数を純虚数とする(すなわち, を純虚数とする)流儀も一般的である.OMCでは,この用語を用いるときにはかならず定義を述べるものとする.