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OMC232

OMC232(A) - さらに考察

ユーザー解説 by Shota_1110

 ここでは一次関数 ff を一般に f(x)=ax+bf(x) = ax + b とおき,もう少し詳しく考察してみましょう.ただし bb は実数とし,aa11 でない正の実数とします.このとき ffnn 回合成を表す xyxy 平面上の直線 y=fn(x)y = f^n(x) は,合成回数を増やすたびにどのように変化するでしょうか.


 ff によって値が変わらない実数,すなわち f(x)=xf(x) = x なる xx を求めると x=ba1x = - \frac{b}{a - 1} が得られる.したがって,xyxy 平面における直線 y=f(x)y = f(x) は点 (ba1,ba1)\left (- \dfrac{b}{a - 1}, - \dfrac{b}{a - 1} \right ) を通過する(以後この点を PP と呼ぶ).このことが分かるよう,f(x)f(x) を以下の形に変形しよう. f(x)=a(x+ba1)ba1(1)f(x) = a \left ( x + \dfrac{b}{a - 1} \right ) - \dfrac{b}{a - 1} \tag{1} すると任意の正整数 nn に対し,fn(x)f^n (x)fn(x)=an(x+ba1)ba1(2)f^n(x) = a^n \left ( x + \dfrac{b}{a - 1} \right ) - \dfrac{b}{a - 1} \tag{2} と表されることが帰納法により簡単に示すことができる.

証明  式 (1)(1) より n=1n = 1 のときは明らかに成り立つ.n=kn = k で式 (2)(2) が成り立つと仮定する.このとき fk+1(x)=f(fk(x))=f(ak(x+ba1)ba1)=a(ak(x+ba1)ba1+ba1)ba1=ak+1(x+ba1)ba1 \begin{aligned} f^{k + 1}(x) = f(f^k(x)) &= f \left (a^k \left ( x + \frac{b}{a - 1} \right ) - \frac{b}{a - 1} \right ) \\ &= a \left (a^k \left ( x + \frac{b}{a - 1} \right ) - \frac{b}{a - 1} + \frac{b}{a - 1} \right ) - \frac{b}{a - 1} \\ &= a^{k + 1} \left ( x + \frac{b}{a - 1} \right ) - \frac{b}{a - 1} \end{aligned} が得られるので,n=k+1n = k + 1 のときも式 (2)(2) が成り立つ.

 要するに ff の合成回数 nn11 から順に増やしていくと,直線 y=fn(x)y = f^n(x) は点 PP を中心として回転するように傾きが aa2a3a \rightarrow a^2 \rightarrow a^3 \rightarrow \cdots と変化する.特に n1n2n_1 \neq n_2 なる 22 つの正整数 n1,n2n_1, n_2 に対し,22 直線 y=fn1(x),y=fn2(x)y = f^{n_1}(x), y = f^{n_2}(x) のそれぞれの傾き an1,an2a^{n_1}, a^{n_2} は異なっているため,これらは平行でなく共有点は点 PP ただ一つである(ちなみに公式解説で f10(x),f401(x)f^{10}(x), f^{401}(x) が関数として相異なると述べているが,この議論の通りそもそも傾きが等しくない).このことから,方程式 fn1(x)=fn2(x)f^{n_1}(x) = f^{n_2}(x) の解が x=ba1x = - \dfrac{b}{a - 1} のみであることもわかる.