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OMC217

OMC217(F) - Lagrange の未定乗数法

ユーザー解説 by Tempurabc

 高校範囲からは逸脱しますが,問題の形式から微分を想起する方向けです.
 ただ,普通に微分しようとすると,y\sqrt{y}x3\sqrt{x^3} あたりが計算を厄介にしそうなので,少し工夫をしたいところです(もしかすると工夫せず求まるかもしれませんが,あまり考えていません).


 まず,与えられた条件を次のように書き換える. 11+yx+11+zy+11+x3z=1\dfrac{1}{1+\frac{\sqrt{y}}{x}}+\dfrac{1}{1+\frac{z}{y}}+\dfrac{1}{1+\frac{\sqrt{x^3}}{z}}=1  ここで s=yxs=\dfrac{\sqrt{y}}{x}t=zyt=\dfrac{z}{y}u=x3zu=\dfrac{\sqrt{x^3}}{z} とおけば,与条件は対称的な式となる.
 一方,最大値を求めるべき変数 zz についても考える必要がある.s,t,us,t,u の定義の式から x,yx, y を消去すると s6t3u4=1zs^6t^3u^4=\dfrac{1}{z} を得る.決してきれいな式ではないが,要は s6t3u4s^6t^3u^4 の最小値を求めればよいことになる(微分しやすいという点では,そう悪くない式である).
 以上の考察から元の問題は,次のような問いに変化した.

  • 条件 11+s+11+t+11+u=1\dfrac{1}{1+s}+\dfrac{1}{1+t}+\dfrac{1}{1+u}=1 のもとで,s6t3u4s^6t^3u^4 の最小値を求めよ.

 このようにして,Lagrange の未定乗数法を使おうという発想に至る. f(s,t,u,λ)=s6t3u4λ(11+s+11+t+11+u1)f(s,t,u,\lambda)=s^6t^3u^4-\lambda \left( \dfrac{1}{1+s}+\dfrac{1}{1+t}+\dfrac{1}{1+u}-1 \right) と置いて,こつこつ偏微分していこう. {fs=6s5t3u4+λ1(1+s)2=0ft=3s6t2u4+λ1(1+t)2=0fu=4s6t3u3+λ1(1+u)2=0\begin{cases} \dfrac{\partial f}{\partial s} =6s^5t^3u^4+\lambda \dfrac{1}{(1+s)^2}=0 \\ \dfrac{\partial f}{\partial t} =3s^6t^2u^4+\lambda \dfrac{1}{(1+t)^2}=0 \\ \dfrac{\partial f}{\partial u} =4s^6t^3u^3+\lambda \dfrac{1}{(1+u)^2}=0 \\ \end{cases}  偏微分後の第 11 項がいずれも s6t3u4s^6t^3u^4 由来であることに注意すると,次のように式変形できる: s6(1+s)2=t3(1+t)2=u4(1+u)2\dfrac{s}{6(1+s)^2}=\dfrac{t}{3(1+t)^2}=\dfrac{u}{4(1+u)^2}  よって結局は,次の連立方程式を解けばよい. {11+s+11+t+11+u=1s6(1+s)2=t3(1+t)2=u4(1+u)2\begin{cases} \dfrac{1}{1+s}+\dfrac{1}{1+t}+\dfrac{1}{1+u}=1 \\ \dfrac{s}{6(1+s)^2}=\dfrac{t}{3(1+t)^2}=\dfrac{u}{4(1+u)^2} \\ \end{cases}  この方程式は一見難しそうに見えるが,次の式変形に気づけば,計算は複雑ではない. s(1+s)2=11+ss1+s=11+s(111+s)\dfrac{s}{(1+s)^2}=\dfrac{1}{1+s} \cdot \dfrac{s}{1+s}=\dfrac{1}{1+s}\left(1-\dfrac{1}{1+s}\right)  改めて 11+s=p\dfrac{1}{1+s}=p11+t=q\dfrac{1}{1+t}=q11+u=r\dfrac{1}{1+u}=r と変数を置き直す.p+q+r=1p+q+r=1 も用いることで,先ほどの連立方程式は次のように書き直される: {p+q+r=1p(q+r)6=q(r+p)3=r(p+q)4\begin{cases} p+q+r=1 \\ \dfrac{p(q+r)}{6}=\dfrac{q(r+p)}{3}=\dfrac{r(p+q)}{4} \\ \end{cases}  この第二式より,ある定数 kk を用いて pq+qr=3k,qr+rp=4k,rp+pq=6kpq+qr=3k, qr+rp=4k, rp+pq=6k と置ける.これより簡単に pq=52k,qr=12k,rp=72kpq=\dfrac{5}{2}k, qr=\dfrac{1}{2}k, rp=\dfrac{7}{2}k を得る.積を取って pqrpqr の値を求めれば,適当なわり算によってp=70k2,q=70k14,r=70k10p=\dfrac{\sqrt{70k}}{2}, q=\dfrac{\sqrt{70k}}{14}, r=\dfrac{\sqrt{70k}}{10}
 あとは,p+q+r=1p+q+r=1 より k\sqrt{k} が求まり,従って p,q,rp, q, r が求まり,さらには s,t,us, t, u も求まる.


 なお,Lagrange の未定乗数法は極値(最大値)の存在を保証するものではないので,厳密にはその点には注意が必要です(OMCのルール上,そのようなことは考える必要がないのですが…).詳しくは適当な参考書等で確認してください.
 類題として,OMC112(C)OMC132(E) を挙げておきます.