ここでは, この問題に関連する構図を紹介することに重きをおいて解説をします(解答の方針はほぼ公式解説と変わりません). まず, 言葉を二つ定義した上で, 一般的に成立する定理(構図)を三つ列挙します.
定義1. 三角形 ABC のA に対する中線を m とする. このとき, ∠BAC の二等分線に関して m と対称な直線を, 三角形 ABC の A に対する疑似中線またはsymmedianと呼ぶ.
定義2. 四角形 ABCD が調和四角形であるとは, 円に内接し, さらに AB×CD=BC×DA を満たすことを言う.
定理1. 三角形 ABC の直線 BC 上に 2 点 P,Q があり, 三角形 ABC の外接円と三角形 APQ の外接円が接するとき, 直線 AP と直線 AQ は ∠BAC の二等分線に関して対称である.
定理2. 三角形 ABC の外接円と三角形 ABC の A に対するsymmedianの交点を P とすると, 四角形 ABPC は調和四角形である.
定理3. 調和四角形 ABCD について, その外接円の中心を O, 線分 BD の中点を M とすると, 4 点 A,C,M,O は同一円周上にある.
定理1,2,3の証明は省略して, ここでは先に進みたいと思います. まず, 定理1より, 直線 CQ は三角形 ABC の C に対するsymmedianであることが分かります. 従って, 定理2より四角形 AQBC は調和四角形です. よって, 三角形 ABC の外心を O とすれば, 定理3より 4 点 C,Q,M,O は同一円周上にあります. 以上より, Ptolemyの定理から, 定義2に気をつけることで
CQ=ABAC×BQ+BC×AQ=AB2×AC×BQ=5
が分かります. さらに, 直線 CM と Ω の交点を R とすると, 定義1から Q と R は線分 AB の垂直二等分線に関して対称なので, 方べきの定理より
CM×QM=CM×RM=AM×BM=25324
が分かります. そして, 正弦定理より
sin∠CAQ=sin∠ACB×ABCQ=95
であるので,
sin∠CMQ=sin∠COQ=812014
が分かります. よって求める面積は
21×CM×QM×sin∠CMQ=5814
です.
さて, 最後に, 本問では使わなかった調和四角形やsymmedianにまつわる, 定理2,3以外の主な定理を紹介して終わりたいと思います.
定理4. 三角形 ABC の A に対するsymmedianと三角形 ABC の外接円の B,C での接線は一点で交わる.
定理5. 調和四角形 ABCD について, 弧 BCD の中点を M とすると, ∠DAB の外角の二等分線, 直線 BD, 直線 CM は一点で交わる.
定理6. 三角形 ABC の A に対するsymmedianと辺 BC の交点を P とすると BP:CP=AB2:AC2.