ここでは,補題の証明の補足を書いておきます.( ζ は公式解説と同様に定義します.)
- ζ の最小多項式が X4+X3+X2+X+1 であることについて
X4+X3+X2+X+1 が ζ を根として持つことは容易に確かめられるため,X4+X3+X2+X+1 が有理数係数の範囲で因数分解できないことを示せばよいと分かる.ここで,X4+X3+X2+X+1 は ζ,ζ2,ζ3,ζ4 の 4 つの複素数を根として持ち,これらはいずれも実数ではないことから,X4+X3+X2+X+1 は有理数係数の一次式を因数に持たないと分かる.よって,因数分解できたと仮定すると,有理数係数の二次式 f(X),g(X) によって
X4+X3+X2+X+1=f(X)g(X)
と表されることが分かる.このとき,一般性を失わずに f(X) が ζ を根として持つとできる.すると,f(X) は ζ と共役な複素数である ζ4 も根として持つため,解と係数の関係より,ζ+ζ4 は有理数ということになる.しかし,ζ+ζ4=2cos72∘=25−1 であり,これは無理数であるため矛盾する.よって,背理法より,X4+X3+X2+X+1 が有理数係数の範囲で因数分解できないと示されたため,最小多項式であることも示された.
- a+bζ+cζ2+dζ3+eζ4=0⟺a=b=c=d=e について
⟸ については,1+ζ+ζ2+ζ3+ζ4=0 より明らかである.以下,⟹ を示す.a+aζ+aζ2+aζ3+aζ4=0 と合わせて (b−a)+(c−a)ζ+(d−a)ζ2+(e−a)ζ3=0 が従う.ここで,b−a,c−a,d−a,e−a の中に 0 でないものが存在する場合,ζ を根として持つ 3 次以下の有理数係数多項式が存在することになり,ζ の最小多項式が 4 次であることに矛盾する.よって,a=b=c=d=e が従う.